【#感想文】映画『メイクアガール』見た感想と軽めの考察。
作品感想文こんすが、夏加よすがです。
リスナーさんから「感想が聞きたい」とのことでご要望頂いていたアニメ映画『メイクアガール』の感想をちょっとばかり。
前提として、「映画しか見ていない」です。
他の媒体で出されてるスピンオフ的なストーリーは知らない状態です。
あらすじ
日常的な雑用向け?か何かのロボット「ソルト」を義父・庄一と共同開発した天才科学者少年の水溜明は、新たな実験・開発が思うように進まずに行き詰っていた。
義父で研究者である・庄一や同じく研究者で近所のお姉さん・絵里にも感心されるほどの科学者ではあるものの、明は「それは全部母の遺産みたいなものだから」と自分の技量に納得できずにいた。
ある日、友人の邦人が「彼女が出来てバイトが2倍捗るようになった、俺はパワーアップしたんだ」という話をするのを鵜呑みにした明は、人造人間のカノジョ「0号」を作り出す。
0号は最初こそ人間の機微に疎かったり家事や仕事を上手くできなかったりしたが、明の友人たちである邦人と茜のサポートのもとでアルバイトに励んだりする中でみるみるうちに出来ることは増えていく。
一方で明の方は相変わらず実験が上手くいかず、さらには0号によって時間が取られて実験にかける時間も減ってしまい、対照的に0号はどんどん人として学んで進んでいくことに置いていかれるような気持ちを抱えていく。
そして遂には0号に対して「恋人じゃなくて友達になろう」と言って一方的に0号を新居に置き去りにしてしまう。
なんやかんやあって母・稲葉が残したメモリを通して死んだ母と言葉を交わし、やっぱり0号と一緒に生きて行こうと決意して迎えに行くも、0号は謎の人物によって誘拐された後だった。
0号は自分の気持ちが「作られたものでしかないのか」という苦悩を抱え、迎えに来た明に思いをぶつけるが……。
感想
映画を通して思った感想は、「好き嫌いが分かれたり、描かれてない部分を推測で補完できる人できない人とで理解度が分かれる作品だな」という感じ。
はっきりとこうだ!って明言されてないけど、多分セオリー的にこういう裏事情があるんだろうなって察するものはあるんですけども……けども!
明言されてないので「多分そうなんだろうな」って思うだけで、それでも一部分に関しては「あれって結局どうだったの?」って思うシーンがあったりして。
なんていうか……消化不良?噛んでみたんだけど味が複雑すぎておいしいともまずいとも言えず、飲みこみづらいなーって印象。
別にストーリーの軸がブレてるわけでも、シナリオがおかしいわけでもないんです。
ただ、空気感と雰囲気で味わうにはちょっと何かが足らなくて、きちんと踏み込んで嚙み砕こうとすると「おおん……?」ってなっちゃう感じがあって、手放しで人におすすめするには微妙なところ。
水溜明の素性
冒頭で「人造人間を作るための大きな水槽の中から女性を見ている人」がちらっと映るシーンがあるんですけど、あれ多分……水槽の中にいたのは明であり、明を見上げていたのは母親だったんだろうなっていうのはわりと早いこと気付いたんですよ。
あと公式ページにも書いてあるんですけど明は右腕が義手となっているんですけど、それ以外は生身の体みたいだし食事も摂るから基本的なところは「人間」として構成されているはずなんですよね。
ただ冒頭のシーンから考えるなら、やっぱり明はそもそも自分自身が「人造人間」であることに間違いないんじゃないかと思うんですよ。
ちなみに0号も食事を摂ってトイレに行ってるらしきシーンもあるので、多分ソルトみたいなロボットではなく「人間」として生身の体を持っていると思います。
両者とも、ある場面で目が金色に光る(明の母・稲葉が構築したのであろう生体制御がかかっている描写)という特徴があるので「稲葉の技術を利用して作られた人造人間」であることは間違いないはず。
でも、明と0号以外に同じような人造人間が存在する気配が全くないんですよね。
明は一体何のために作られたの?
明も0号と同じく「第三人類」ってやつだと思うのに、なぜ誘拐犯は明には手を出さなかったのか?
まあ、明の傍に義父がいたから容易に手を出せなかったのかもしれませんが……。
そのへんが最後までよくわかりませんでした……もっとちゃんと見返したら理解できるものなのかもしれないけど、一回見た時点ではうーん?って感じ。
水溜明の技術力
今までソルトやカップ麺自動調理器や黄色ソルトのプログラム適用?やらが全く上手くいかなかったのに、なんで「よっしゃカノジョとして人造人間作ったろ!」があっさり上手くいったんだい……?
ていうか食事して排泄して自分で学んでいく人造人間(明もだけど)なんて、ソルトや自動調理器なんて比較にならないくらいの超発明じゃない!?
明の周りも「ついには人造人間を作ってしまうなんて」って言ってたような気がするから、決して世間的に当たり前の技術ではないはずなんですよ。
0号の存在が発明の成果でなくて何なんだ……。
あと「彼女作ったらパワーアップするからお前も彼女作れよ~」って言われて「よし造ろう(開発)」ってなる明くん、ぶっ飛んでるなぁ。
明くん自身が作られた人間、プログラムされた人格だから「彼女を作る=人と心を通わせる」っていうことに疎いのだろうか。
0号ちゃんの成長が早すぎる
0号は「彼女(恋人)らしい振る舞い」を学ぶために茜に世話になるのですが、アルバイトでは最初こそハンバーグを黒こげにしたもののあっという間に成長したし、明に対する気持ちも「これはそう作られたから?」と思ったのも束の間、明をデートに誘って服を選んでもらったところで嬉しく感じている自分に「そっか、これでいいんだ」と納得を得ていました。
まあ……映画の1時間半っていう尺の中で収めるためにはこのあっさり度合じゃないと難しいのは分かった上で、倍の尺でもう少し0号の苦悩に浸る時間欲しかったな!
みたいな感じ。
「私の明さんへの好きって気持ちはプログラムされたものなの?」からの吹っ切れが早すぎて、明くん共々わたしも置いていかれ気味でした。
茜ちゃんちょっと不憫
多分だけど、茜ちゃんは明のこと異性として意識してるし好きだって自覚もあるよね?
明のどこがいいのかさっぱり分からないというか、「明のこういうとこが茜ちゃんは好きなんだろな」って思うシーンが多分一切無いもんだから理解はできないけど。
でも、「0号ちゃんがあんまりにも一生懸命だから」って明と0号を後押しするように一歩引いていた。
でもねでもね、明が0号に対して「恋人としての愛」ではなく「家族愛」を向けることを心に決めてしまった時点で、茜ちゃんの遠慮とか身を引く心とか台無しなんだよね。
茜ちゃん自身は恋敵になり得る0号に対して大きく嫌悪感を抱くところも見せずに「仕方ないんだから」みたいな感じで世話を焼くようないい人だもんで、良い子すぎて不憫だなぁと思った。
明が稲葉と0号に向ける思い
明にとって稲葉は母親であり尊敬する研究者ですよね。
病気で幼いころに死んでしまった稲葉の研究を引き継ぐために自分も研究者の道に進んだ、この気持ちは十分理解できるものなんですけど。
メモリに残された記憶の残滓みたいな稲葉と夢の中で対話するシーンで、「稲葉が残したのはただの研究記録なんかじゃなかった」と気付き、母から「家族愛」のようなものを受け取るのもふむふむと思って見てました。
でも、そこから「0号と仲直りして家族として一緒にいよう」と思うその流れが、わたしには理解しきれませんでした。
推測としては、稲葉が息子として明を作って稲葉なりの情愛を向けたように、明は自分で作りだした0号を娘のように思い情愛を向けることにした、のかもしれませんけど……。
稲葉からの情愛を「気持ち」として理解したのではなく、稲葉の記憶としてメモリに残された「プログラムとしての感情」を理解したということなのだろうか、と。
稲葉は自分の記憶をメモリに残したみたいに言ってましたが、メモリに残された記憶や感情って所詮は機械的に設定・記録されたAIみたいなものだと思うんですよ。
そこにあるのは「人間の感情そのもの」ではなくて、「この感情はこういうもの」という定義みたいなもの……上手く言えないな。
明も0号と同じように知識や感情をプログラムされて作られたのだとしたら、明の思考も「これに対してはこういう思いを抱く」と稲葉に仕向けられた(と言ったら言い方が悪いけど)ものだと思うんですよね。
明は稲葉の残した記憶をプログラム的に理解し、作られたものであることをそのまま受け入れ、0号にも同じように「家族愛」を向けようとした。
そういうことでいいのかな……?
0号誘拐犯の正体
わりと序盤で匂わせっていうか、怪しいよねって人いたもんね。
ヘルメット外して正体を現した時にさして驚くことはなかったな。
そしてその心情も天才少年へのただの当たり前の嫉妬みたいなもんでしかない上に、そこに対して強い感情を見せることもなかったので存在感薄すぎて……。
0号ちゃんの暴挙が暴挙すぎてびびる
終盤、0号は「自分の思いは作られたものじゃない」「生体制御で制御されるようなものじゃない」という自分の存在証明みたいな動機で明に攻撃を仕掛けます。
り、理屈は分かるんだけども!
自分の思いを分かってもらうために明くんを破壊してしまったら元も子もなくない!?
わりとガチめに明くんを殺しに来てたもんだからめちゃくちゃびっくりしちゃった。
0号が「好きってこれでいいんだ!」て吹っ切れた時くらい気持ち置いていかれた感じしちゃった。
後から思い返してこういうことだったのかなーって思えはするんだけど、見てる最中にそこまで理解が追い付かなかったって言った方がいい?
人間に置き換えると「生存本能に抗って我が身を犠牲にする」みたいな感じなんだろうけど、明くんの話も聞いてあげて……。
いや、まあ明くんは「家族愛」として0号と生きていくつもりでいて、0号は「恋人」として明を好きだから相互理解は難しいかもしれないけどさ!
明と0号のラブコメとかだと思ってたら0号誘拐あたりからラブコメじゃなくなっちゃったしどういう情緒でいればいい?って感じ……。
最後の「明くん」は何
結局生体制御に無理に抗って意識を失い昏睡した0号は、目覚めて明と再会した時にこう言います。
「おかえり、明くん」
明“くん”!?
ていうか「明くん」だけ母の声になっとるが!?
えっ0号ちゃんは0号ちゃんとしての自我失いでもしたんですか?
稲葉が残したメモリに自我上書きされて稲葉になっちゃったエンドですか?
普通にサイコホラーみを感じて怖かった……。
このへんはスピンオフとか読んだら答えがあるのだろうか。
3Dアニメ特有の動きの情緒豊かさはよい
3Dモデルによる細かな動きや作画の安定感はよかった。
最近バンドリアニメ「MyGo」と「AveMujica」でも思ったけど、作画面の心配をそれほどしなくていい=物語の内容に集中できるっていうのは良い点だなーと思う。
表情とかが乏しくなるってわけでもないし、違和感もそんなにない、技術の進歩ってすごいな。
特に0号誘拐が発覚してシステムを駆使して明が0号を追いかけるシーンは多分作中一番盛り上がったレベルでかっこよかった。
ソルト2体がぐるぐるきゅいーんってスクーターに変形するのいいね。
ていうかソルトかわよ。
そういうアニメーションとしての描写方法はめちゃくちゃよかっただけに、物語の本筋の起伏がいまいちなのが惜しかったなぁって感じ。
総合的な読後感
見終わった後の総合的な感想は、「理解しきれなかった」という感じ。
「寂しく悲しい結末だった」とか「続き(物語後の話)が気になる」とかそういうのよりも、上手く飲み干せなかったなって感じ。
明にも0号にもあまり感情移入できなかった。
もう少し心情描写に時間を割けたなら、明が研究へ向ける感情の根本的なものとか、0号が作られた感情に悩み吹っ切る過程だとかもう少し溜め時間や深堀が欲しかったような気がしなくもない。
1時間半って時間じゃ足りないなーって感じ。
別に面白くないとも思わないけど、好き嫌いは分かれそうだなって。
わたしは、好きになる以前にもう少し理解しやすさがあったらなーって、すっきりしない気持ちかな。
ここに関してはこういう描写があったよ、とか補足してくれる人居たらコメントとかで教えて~。
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